通訳日記 ザックジャパン1397日の記録

今や昔のこととなるが、かつてまったく事前の盛り上がりをみせないW杯があった。南アフリカ大会だ。やっているサッカーもほんよう、圧倒的期待を集める選手すらいなかった。居たとして中村俊輔くらいかも、でも皆、彼が天才であることを認めつつも奇跡を起こすタイプでないこともどこかで知っていた。

 
本大会では、守備固めからの速攻で点をかっさらい、あれよあれよという間にベスト16。パラグアイにPK負けをして日本のW杯は終わった。
 
そしてそこからサッカーブームが再び始まった。
 
そんな熱狂に浮かれられた四年間の記録。ザッケローニが日本代表監督となり、彼の通訳である矢野さんがつけた日記が形になったもの。
 
これ結構面白かった。何と言っても四年間、「あの」代表チームを応援した心の軌跡みたいなものを辿ることができる、圧倒的親近感とともに。ぼくらは、チームに起こったことを知っている、本田が膝をケガしたことも、香川がマンチェスター・ユナイテッドに移籍したことも、フランスでブラジルにひねり潰されたことも、アジアカップで幾度となくピンチを乗り越えて優勝したことも、W杯で優勝を狙うと言っていたことも、「メンタルが。。。」という言葉が頻繁に出てくることも。
 
そのたびに、ぼくらは彼らと同じ気持ちになり、同じように自分を引き締めて生活を送ってきた。それだけ惹きつけるものがあるチームであり、選手が揃っていたのだ。楽しかった、単純にあのチームは単純に楽しかった。
 
そして、この本では四年間にあったことをザッケローニと選手に一番近いかぶりつきの席で追体験するための本だ。
 
日本での予選はほとんど生で観戦した。最終予選の最初の二試合は興奮でしかなく、イラク戦は拍子抜けして、フラストレーションのたまる試合だった。日本でのオーストラリア戦だって、実際にあの場に居ても点なんて入りそうになかった。
 
本当に強かったのはアジアカップのころだけだったんじゃないんだろうか?と思うような戦いぶりだった。それでも、なぜかわくわくさせてくれる代表チームだった。希望があったから。
 
個人的なハイライトは、ワールドカップ敗退後の本田とザッケローニの最後の会話。ザッケローニはいいときも悪いときも、どんな試合であろうと本田を使おうとしたし、実際に使ってきた。そのザッケローニからの信頼に対して、本田がお礼を言う場面がある。
 
本田は自分の実力も分かっているし、コンディションも最高を保てていないことも分かった上で、それでも最高のプレーをしようとしてきたことが分かる。勝利につながらないプレーしかできないこともしばしばだったが。
 
まるで親子のような信頼関係をみて、救われたような気持ちになったのがこの本の印象だなぁ。
 

 

通訳日記 ザックジャパン1397日の記録 (Sports Graphic Number PLUS)

通訳日記 ザックジャパン1397日の記録 (Sports Graphic Number PLUS)