ルパンばかり観た

会社を無断で、一応断りもいれたが、休むととても反社会的な行為をしているように感じる。心はどこか落ち着かないし、常に監視されているようだった。いったい誰が監視しているというのだろうか。ぼくらの心にはビッグブラザーが住み着いていて、常に正しき人間であるか否かを見張られている。

やることなくなったけれど、眠れるわけでもない。仕事はもう行きたくなかったけれど、社会に放り出されるのも恐怖でしかなかった。

結果的に、この二年間が父親と過ごす最後の機会になった。それはあくまで結果という出来事であって、意図があったわけではない。もしこの二年間に意図があったら、神様が引き寄せてくれたのかもしれないと思いたい。

ただ、この瞬間に重要であったのは、ぼろぼろにされてしまった自分を取り戻すことだった。細胞のひとつひとつにまで、失格の烙印を刻みこまて、どこか遠くに放り出されてしまったような感覚だった。

まずやったこと。

ルパン三世の映画を一つ残らず観た。カリオストロの城も観たし 、燃えよ暫鉄剣も観た。それも一回でなく、三度は観と思う。ひたすら、ひたすらルパン三世を観た。

次にやったこと。

The OCを観た。オレンジカウンティの金持ちドラマ。ミーシャ・バートンが神がかった少女としての輝きを放っていた。

このころの生活のリズムを記してみよう。

その前に前提として、ぼくは実家にもどり、庭付き一戸建てという夢のような家に住む、もしくは身を休めることになった。

木造二階建ての二階にぼくの部屋がある。十畳ほどの広さがある部屋だ。

朝6時に目が覚める。薬が切れると覚醒がやってくるのだ。

両親が出かけるのが8時半過ぎ。それまではインターネットの世界へ逃げ込むか、ルパン三世か、The OCを観てやり過ごす。

9時になり家に一人きりになると、朝食を食べる。食欲が旺盛ではないけれど、食べるという行為は心を落ち着かせてくれた。

朝食を食べ終わると、またルパン三世かThe OCを観る。今思い返すと、頭の中から浮かび上がってくるネガティブな妄想を打ち消すために物語必要としていたのかもしれない。

だいたい14時くらいまでそうしている。

14時から17時くらいまでは寝てしまう。気がつくと昼間の活動エネルギーは奪われた身体になっていたようだ。

17時過ぎから20時くらいまで、だらだらとインターネットしたり、またDVDを観たりしてやり過ごす。

いい加減にお腹がすくので、夕食を食べる。これで気がつくと21時くらいだ。

食後にDVDを観るともう22時半近い。ぐだぐだしながら、23時くらいに外に散歩に行く。夜の街に人はほとんどいない。

24時に散歩から戻り、風呂に入り、それから薬を飲んで寝ることにする。

布団にはいるが、簡単には眠りにつくことができない。気がつくとお腹がすく、睡眠導入剤の副作用だと思う。

ふらつく意識台所へ行き食べるものを探す。うどんかラーメン作り、腹の中に入れる。この時点で時刻は夜中の2時だ。

お腹が満たされると、やっと眠気が襲ってくるので、そちらに意識をあずける。もう自分で自分をコントロールすることできないのだ。

夜中の2時半から3時くらいに眠りに落ちる。そしてつかの間の眠りを経ると朝がやってくる。このスパイラルから抜け出す術がどこからかやってくる気配ない。

ビートルズのTommorow  Never Knowsみたいだ。

Turn off your mind and relax to put down stream.

大きな「何か」があるとして、ぼくはそれに身を任せるしかできないのだから。